コラム

すべての生活は、電力の上に成り立っている

― 水耕栽培・陸上養殖・AI社会を支える今後のエネルギー基盤は、どう再設計されるべきか ―

いま注目される水耕栽培、陸上養殖、AIによる効率化は、どれも未来に必要な仕組みです。しかしその多くは、大量で安定した電力の上に成り立っています。

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この構造は、少し立ち止まって考えれば、多くの人が気づける話かもしれません。水を循環させる。温度を保つ。酸素濃度や養液を管理する。データを処理し続ける。こうした作業はすべて電気があって初めて動きます。にもかかわらず、社会全体ではこの土台が正面から語られにくい。毎日の仕事、毎月の収入、自分の家庭や身の回りを守ることに追われ、土台全体を見渡す余裕を持ちにくいからでしょう。

ですが、土台を見ないまま上物だけを増やしていくことはできません。水耕栽培も陸上養殖も、表面的には食料問題への答えに見えます。AIも、人手不足への答えに見えます。けれど、そのいずれも電力供給が不安定になれば一気に脆くなります。つまり今注目されている多くの解決策は、電力問題の外側にあるのではなく、むしろ電力問題の内側にあります。

新技術は、電力問題を飛び越えて社会を救うのではなく、安定した電力があって初めて社会を支えられる。

だからこそ今、本当に問うべきなのは、新技術の是非だけではなく、それらを支えるエネルギー基盤をどう再設計するのかという問題です。太陽光や風力の拡大は必要ですが、それだけで日本全体の安定電源を担うには限界があります。一方で原子力も、将来永続的に頼るべき唯一の主役ではありません。現実的には、原子力は当面、CO2削減と安定供給を両立させるための橋渡し電源として位置づけるしかないでしょう。

重要なのは、その橋渡しのあいだに「次の基盤」を育てることです。ここで日本がもっと本気で見るべきなのが、地熱発電と深海潮流発電です。地熱発電というと、多くの人は陸上の温泉地や山間部を思い浮かべますが、日本のような火山帯の国では、地熱資源へのアクセス方法そのものをもっと柔軟に考えるべきです。陸上では温泉資源、景観、住環境との調整が大きな課題になります。だからこそ、海側から地熱資源に接近する発想、あるいは沿岸・海底も含めた広い意味での地熱活用を検討する余地があります。

地熱は陸にあるもの、という思い込みを外したとき、日本のエネルギー地図は大きく変わるかもしれません。

日本は掘削技術、海洋土木、耐圧・耐久設備、精密制御といった分野で強みを持っています。地熱を「陸上の限られた選択肢」としてではなく、「陸海をまたぐエネルギー開発」として見直すことができれば、電力の新しい柱を育てる可能性が開けます。

もう一つ、日本が本気で見るべき未開拓領域が深海潮流発電です。海の表面は天候の影響を強く受けますが、より深い海には比較的持続的な流れが存在する可能性があります。そこに着目するのが深海潮流発電という発想です。もちろん簡単ではありません。海中設置、保守、送電、海洋生態系への配慮など、課題は多いでしょう。ですが、難しいからこそ、技術国家であり海洋国家でもある日本にとって挑む価値があります。

陸上の土地利用や景観をめぐる対立を強めずに、未利用空間から安定した電力を取り出せる可能性があるなら、それは単なる夢物語ではなく、国家戦略として検討すべきテーマです。食料を守るためにも、AI社会を支えるためにも、まずは電力をどう作り、どう安定させるか。テーマ4は、その土台の議論を正面から置くためのページです。