コラム

夢から逆算して、学ぶ科目を選べる高校へ

受験のための勉強から、「将来につながる学び」へ

高校で何を学ぶかは、本来、大学受験の科目だけで決まるものではありません。 その先にある進路、仕事、暮らし方、社会への関わり方とつながっているはずです。 それでも現実には、受験科目が高校生活の多くの時間を支配してしまうことがあります。

「この勉強は、将来どこで使うのだろう」

高校時代、多くの人が一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。 私自身も理系に進み、大学は建築関係へ進みました。 その過程で、微分、積分、代数、幾何、統計などに多くの時間を費やしました。

もちろん、それらの学問に価値がないという話ではありません。 高度な数学を深く学ぶ人材は、社会に必ず必要です。 科学技術、工学、情報、医療、金融、宇宙、エネルギーなど、社会の先端を支える分野では、高等数学は欠かせません。

ただ一方で、自分が進んだ建築系の大学や実務の中では、高校時代に受験のために費やした時間のすべてが、そのまま生きたわけではありませんでした。 ここに、教育の無駄というよりも、学びと進路の間にある「ズレ」を感じます。

受験科目が、学びの目的を決めてしまう

本来、学びは将来のためにあるはずです。 何を作りたいのか。何を育てたいのか。人の役に立つとは、自分にとってどういうことなのか。 そうした方向性があり、そのために必要な学びを選ぶ。 これが自然な順番ではないでしょうか。

しかし実際には、大学受験で必要だからその科目を取る、点数を取るために時間をかける、という流れになりがちです。 入口であるはずの受験が、目的であるはずの人生や進路を支配してしまう。 ここに大きな問題があります。

大切なのは、数学を減らすことではありません。
必要な人が深く学び、別の方向に進む人は別の学びを厚くできる仕組みです。

高校入学前、または入学直後に考える機会をつくる

生徒にいきなり職業を決めさせる必要はありません。 むしろ、はっきりした職業名でなくてもよいと思います。 「ものを作りたい」「植物を育てたい」「人の役に立ちたい」「地域に関わりたい」「表現したい」。 そのくらいの方向性から始めればよいのです。

大切なのは、自分がどちらを向いているのかを考える時間を、学校生活の早い段階で持つことです。 そのうえで、必要な教科や選択科目を組み合わせる。 そうなれば、同じ高校生活でも、学びの意味は大きく変わります。

選択科目と大学受験を、将来から逆算する

建築に進みたい生徒であれば、数学だけでなく、空間、材料、環境、デザイン、地域、まちづくりに触れる学びがあってもよいはずです。 農業や食に関心があるなら、生物、土壌、気候、流通を学ぶ意味があります。 人と関わる仕事に向かうなら、心理、言葉、対話、福祉、社会制度を学ぶことも重要です。

ところが大学受験が変わらなければ、高校はなかなか変われません。 高校の選択科目を本当に意味あるものにするには、大学側も、受験科目だけでなく、探究、制作、実体験、ポートフォリオのような評価を広げていく必要があります。

全員同じではなく、必要な人に深く届ける

ここで注意したいのは、高度な数学や専門的な学問を軽く見てはいけないということです。 社会の未来を切り開くには、必ず深い数学を身につける人が必要です。 その道に向かう人には、むしろ今以上に厚く、深く学べる環境を用意すべきです。

ただし、それを全員に同じ重さで課す必要があるのか。 ここは見直してよいのではないでしょうか。 学びを一律にするのではなく、将来の方向性に応じて最適化する。 それは、子どもたちの時間を大切にすることでもあります。

学びを、未来から逆算する社会へ

高校の時間は、人生の中でもとても貴重です。 その時間を、ただ受験のためだけに使うのではなく、自分の未来とつながる学びに変えていく。 そのためには、高校の選択科目だけでなく、大学受験のあり方も同時に見直す必要があります。

何を学ぶかを、偏差値や受験科目だけで決めない。 自分が何をしたいのか、社会とどう関わりたいのか、そこから学びを選べるようにする。 その仕組みができれば、学ぶことはもっと前向きなものになります。