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都市の第一次産業は小売である

― 都内小売の継承を促し、都市の暮らしと地域のつながりを守る ―

東京のような大きな都市には、広い畑も、たくさんの漁港もありません。 それでも毎日、食べものが店にならび、みんなが当たり前のように暮らしています。

この当たり前を、最後のところで支えているのが小売店です。 野菜や魚やくだものを、私たちの手に取れる形にしてくれる。 だから大都市では、小売もまた、とても大切な「暮らしの土台」だと考えるべきです。

しかも小売店は、ただ物を売るだけの場所ではありません。 人が顔を合わせ、地域の空気を感じ、会話が生まれる場所でもあります。 都内小売の継承とは、都市の暮らしそのものを、次の世代へ手渡すことなのです。

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はじめに

地方には、農業や漁業があります。 田んぼで米を作り、畑で野菜を育て、海で魚をとる。 こうした仕事は「第一次産業」と呼ばれます。

では、東京のような大都市はどうでしょうか。 都市では、多くの食べものを自分たちで作ることができません。 だから地方から運んでもらう必要があります。

でも、運ばれてきただけではまだ足りません。 それを、家の近くで買えるようにし、 今日の食事として使える形にしてくれる人が必要です。 その役目を果たしているのが、小売店です。

大都市では、小売店までが「暮らしを支える土台」なのです。

1.なぜ小売がそんなに大切なのか

たとえば、おいしい野菜が地方で作られていても、 東京の人がそれを手に取れなければ、毎日の食事にはつながりません。

魚も同じです。 海でとれた魚があっても、 近くの店で見て選べなければ、 その魚は「あるけれど、使えない」ものになってしまいます。

つまり小売店は、 ただ商品をならべているだけではありません。 食べものを「暮らし」に変える最後の場所なのです。

  • 近くで買えるようにする
  • 今日食べたい形でならべる
  • 旬やおいしさを伝える
  • 暮らしの中に食べものを届ける

2.大手スーパーとコンビニだけでよいのか

もちろん、大手スーパーやコンビニはとても大切です。 遅い時間でも買える。 品ぞろえが安定している。 忙しい毎日には、とても便利です。

けれども、それだけになると困ることもあります。 扱いやすいもの、日持ちしやすいもの、売りやすいものが中心になりやすいからです。

そうなると、 季節によって味が変わる野菜や、 少し手間はかかるけれどおいしい魚や、 小さな生産者の商品が、だんだん見えにくくなります。

便利さは大切です。
でも、便利さだけでは「食の豊かさ」は守れません。

3.小さな店がなくなると、何が失われるのか

小さな店がなくなると、品物が減るだけではありません。 人とのやり取りも減っていきます。

「今日はこれがおいしいよ」 「この魚はこう食べるといいよ」 そういう一言は、 ただ物を買うだけではない楽しさを生みます。

とくに高齢の人にとっては、 店へ行くことそのものが外へ出るきっかけになり、 店の人との会話が安心につながることもあります。

つまり小売店は、 食べものの場所であると同時に、 暮らしのつながりの場所でもあるのです。

4.なぜ店を継ぐ人が少ないのか

今、都内では、昔からの小売店を継ぐ人が少なくなっています。 その理由は気持ちの問題だけではありません。

  • 朝早くから夜まで働くことが多い
  • 家賃や人件費が高い
  • 大きな会社との競争がきびしい
  • 続けても十分にもうかるとは限らない

これでは、 「大事な仕事だ」と思っても、 「自分がやっていける」とは思いにくくなります。

今の都内小売は、必要なのに、継ぎたくなる条件が足りていないのです。

5.だからこそ、考え方を変えるべきだ

小売を、ただの「昔ながらの商売」として見るだけでは足りません。 大都市では、小売は暮らしを支える大切な役目です。

地方で農業や漁業を守るように、 都市では小売を守り育てる。 そうした考え方が必要です。

ただし、赤字を埋めるだけでは意味がありません。 大切なのは、 継ぐ人が「やってみたい」と思える仕組みをつくることです。

6.都内小売の継承を進めるための考え方

都内の小売店を継ぐ人を増やすには、 三つのことが必要です。

一つ目は、続けられること。

税金や家賃、設備の更新などで負担が重すぎると、 継ぎたい人はあらわれません。 まずは続けられる土台が必要です。

二つ目は、誇りが持てること。

小売は「ただの店番」ではありません。 都市の食と暮らしを守る仕事です。 その意味を社会全体がきちんと認める必要があります。

三つ目は、新しくできること。

継承とは、ただ昔のまま続けることではありません。 よい商品を選び直す。 店の見せ方を変える。 配達や予約を取り入れる。 そうした新しい工夫ができることが大切です。

7.小売は、地域のつながりを支える「核」でもある

小売店は、食べものを売る場所であるだけではありません。 地域の人が顔を合わせる場所でもあります。

とくに高齢者にとっては、 店へ行くことそのものが外に出るきっかけになり、 店の人との会話が安心につながることもあります。

子どもにとっても、 「この店で買う」という経験は、 地域とのつながりを感じる機会になります。

小売店は、モノを売る場所ではなく、
人と人がつながる「地域の核」でもあるのです。

もし小さな店がなくなってしまえば、 食べものだけでなく、 人のつながりそのものが失われていきます。

8.小売を維持するために必要なこと

都市の小売を守るためには、 気持ちだけではなく、具体的な支えが必要です。

  • 家賃や固定費への支援
  • 税負担の軽減
  • 事業承継の支援(引き継ぎの仕組み)
  • 地域拠点としての役割に対する評価

さらに、 小売店を「地域のインフラ」として位置づけることで、 行政や地域と連携した役割も考えられます。

小売を守ることは、
店を守ることではなく、
生活と地域を守ることです。

9.小売を継ぐことは、都市を継ぐことでもある

小売店を継ぐというと、 一つの店を守るだけの話に聞こえるかもしれません。 でも、本当はそれだけではありません。

その店が残ることで、 近所の人が季節を感じられる。 おいしいものに出会える。 人と話せる。 そうした日々の豊かさが残ります。

東京のような都市は、 自分で食べものをたくさん作ることはできません。 だからこそ、最後に届ける仕組みを守ることが大切です。

都市は、自ら作らない。
だからこそ、届けきる力を守らなければならない。

都内小売の継承とは、 店を残すことではありません。 都市の暮らしそのものを、 次の世代へ手渡すことなのです。

おわりに

これからの東京に必要なのは、 ただ便利なだけの街ではありません。

便利でありながら、 食が豊かで、 人とのつながりがあり、 毎日の生活に少し温かさがある街です。

そのためには、 都内の小売を「消えていくもの」として見るのではなく、 「継ぐ価値のある仕事」として見直す必要があります。

地方に第一次産業があるように、 大都市にも守るべき基幹産業があります。 それが小売です。

便利な食は残る。
豊かな食は消える。

そして最後に残るのは、
「誰とも関わらずに生きる都市」かもしれません。

それを選ぶのは、私たちです。