ある日、スマホの電源は入るのに、通信だけが使えなくなったら。 電話はつながらない。検索もできない。メッセージも届かない。 それだけで、私たちの日常はかなり揺らぎます。
とくに中高生や大学生は、連絡、地図、決済、調べ物まで、かなりの部分をスマホに頼っています。 だからこそ、一度くらいは「通信がない日」を安全な形で体験してみてもよいのではないでしょうか。
災害時に怖いのは、地震や停電そのものだけではありません。 連絡が取れない。正しい情報がわからない。家族や友人の居場所がわからない。 そうした小さな不安が重なることで、判断が遅れ、行動が乱れていきます。
従来の防災訓練は、避難経路や避難動作を確認するものが中心でした。 もちろん、それは必要です。ただ、今の社会ではもう一つ、 「情報が入らない状態でどう動くか」を試しておく必要があります。
やり方は、難しく考える必要はありません。 たとえば半日から一日、子ども本人のスマホ通信だけを止める。 親や先生のスマホ、テレビ、ラジオなどは使えるようにしておく。 安全は確保したうえで、「自分で検索してすぐ解決する」ことだけを止めてみるのです。
すると、待ち合わせの決め方、家族との連絡方法、ニュースの見方、 地図やメモの使い方など、ふだん見落としていることが一気に見えてきます。 便利さを否定するのではありません。便利さに頼りきったときの弱さを知るためです。
この訓練をすると、紙のメモ、集合場所の事前確認、ラジオ、掲示板、 近所の人との声かけなど、古く見える手段の意味も見えてきます。 ふだんは目立たない方法が、いざという時には助けになる。 その感覚を持てるだけでも、大きな学びです。
もちろん、厳しくしすぎる必要はありません。 本当に困ったときは大人に確認できるようにする。 家庭や学校で無理なくできる範囲から始める。 そのくらいで十分です。防災訓練は、我慢大会ではないからです。
地震、台風、大規模停電、通信障害、サイバー攻撃。 どの原因であっても、通信が止まれば生活は大きく乱れます。 だからこそ、平時のうちに一度だけでも体験しておく意味があります。
「スマホが通じない一日」を経験した子どもは、 災害時にただ不安になるだけでなく、何を確認し、誰に聞き、どう動くかを考えやすくなります。 それは、これからの時代に必要な防災の力だと思います。